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2014“SHOTGUN SPECIAL” STORY vol.1
オーダーカードのファイルを持って待っていたエリックさん。
そこへリペアルームから、2本のフィンが失われ、ボトムに無数の穴があいた無惨な姿のサーフボードが運ばれてきた。
それは2010年の秋に届いた特別なサーフボードだった。
板を見つめるエリックさんが顔を上げる前に僕は「sorry!」と言った。
目を丸くして眉を上げ、薄笑いを浮かべながら「shotgun?」と聞かれたが「no.」と答える。
それは松部の崖下のフジツボだらけのテーブルに打ちつけられた傷だった。
SHOTGUNはマリブの遥かアウトサイド、勝浦湾の中央(というよりは外洋に近い)にある中根と呼ばれる岩礁でブレークする波のことで、海底にヒットしない限りは周囲にぶつかる岩はない。
深い外洋からいきなり水深2メートル程の岩礁にヒットするこの波はチャンネルの水ごと岩礁に吸い込むようにして一気に立ち上がる為、スウェルディレクションによっては2段3段と掘れ上がるクセのあるピークになる。
急激に立ち上がる波の下の空気は行き場を失いボトムからトップに向かって吹き上がる。それはビッグウェーブでは当たり前の事だがここの風はさらに強く吹く。
トップから吹き上がれなかった空気はバレルの中に押し込まれバレルの口から物凄い勢いで外に吹き出てくる。
その水滴の凄まじさがSHOTGUNの名前の由来だろう。
写真の板は、エリックさんがそんなシチュエーションをサバイブするためマジックを詰め込んだ傑作だった。
しかし・・・僕は松部のサードリーフからこの板と共に人生最高の波に乗り、代償として板は無惨な姿に変わることになる。
続きはまた次回に。
筆者紹介
HIC JAPAN TEAM RIDER
石丸 義孝 – Yoshitaka Ishimaru
生年月日:1963.4.2
ホームポイント:マリブ 松部 SHOTGUN
ボードスペック
:5’10” x 20 1/8″ x 2 7/16″ Rocket Fish
:6’4″ x 18 1/4″ x 2 1/4″ Amplifire
:8’4″ x 19 5/8″ x 3+ SHOTGUN SPECIAL